確かにそのとおりなのですが、髪の毛以外の部分で発生する脱毛症もあります。
髪の毛のみで発生する代表的な脱毛症は、AGA(男性型脱毛症)です。
前頭部と頭頂部の髪の毛のみが薄くなっていき、その他の部分での脱毛は発生しません。
これに対して、全身の体毛で発生するのが「円形脱毛症(えんけいだつもうしょう)」です。
髪の毛に発生する場合が圧倒的に多いですが、眉毛やヒゲ、腋毛などの部分でも発生します。
円形脱毛症は、別名「十円ハゲ」とも言われています。
平安時代には鬼が舐めたあとと考えられていて「鬼舐頭(きしとう)」と言われていました。
円形脱毛症とは、突然、髪の毛などに円形や楕円形の脱毛部分ができる脱毛症です。
脱毛部分がはっきりしているのが特徴です。
これは脱毛に勢いがあるためです。
円形脱毛症は、AGA(男性型脱毛症)、びまん性脱毛症(女性型脱毛症)の次に発症者の多い脱毛症です。
また、脱毛症と言えば中年以降の男性がなるイメージが強いと思いますが、円形脱毛症は若い人の方が発症しやすい脱毛症です。
円形脱毛症の発症者の約1/4は、15歳未満(小児科の対象年齢)です。
円形脱毛症は、解明されていない部分が多い脱毛症です。
はとにかく、謎の多い脱毛症です。
突然発症して治る場合もありますし、悪化する場合もありますし、現状を維持する場合もあります。
2017年11月現在、その発生原因を特定できない場合が多いです。
円形脱毛症の発症原因は、「自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)」を原因とする説が有力です。
加えて、アトピー素因やストレス、女性ホルモンの減少なども影響していると考えられています。
自己免疫疾患とは、本来、異物を排除する役割の免疫が、間違って自分の正常な細胞や組織に対して攻撃してしまう症状のことです。
自己免疫疾患の影響している病気には、全身性エリテマトーデスや慢性関節リウマチ、自己免疫性溶血性貧血、橋本病などがあります。
参照:大手町薬局
円形脱毛症の症状(種類)は、その進行状況により、いくつかにわけられます。
上のイラストは、円形脱毛症の主な症状(種類)になります。
単発型
突然、髪の毛に円形型又は楕円形の脱毛部分ができます。
円形脱毛症のなかで、最も多くみられる症状です。
この状態は円形脱毛症の初期症状といます。
皮膚科で適切な治療をうけれは、約80%の人が1年以内に治癒しているとのデータもあります。
多発型
単発型が進行すると多発型になります。
脱毛部分がたくさん発生する症状です。
また、後頭部から側頭部の髪の毛生え際にそって蛇のように広がる症状を「蛇行型」とも言います。
全頭型
脱毛部分が頭部のほぼ全体に広がり、ほとんどの髪の毛が抜け落ちてしまった症状になります。
汎発(ばんぱつ)型
全頭型から更に症状が進行し、髪の毛だけでなく、眉毛やまつげ、体毛など全身の毛が抜け落ちてしまった症状になります。
円形脱毛症のなかで、最も重度の症状です。
円形脱毛症の主な初期症状としては、小さなハゲが出来たり、頭皮に痺れ(しびれ)を感じたり、爪のトラブル(小さな窪みや横方向に入る筋)などがあります。
これらの初期症状は非常に軽微なものなので、気がつかない場合が多いです。
また、まったく初期症状らしきものがなく、突然に円形脱毛症を発症してしまうこともあります。
円形脱毛症は症状が進むほど、完治するのが難しくなります。
「円形脱毛症かな?」と思ったら、一刻も早く皮膚科医の診察を受けて下さい。
円形脱毛症の治療は健康保険が適応されます。
円形脱毛症の治療法は、まだ完全に確立されていません。
なぜなら、その発生メカニズムの多くが解明されていないからです。
それでも、ある程度の効果をあげている治療法はあります。
円形脱毛症は比較的発症者の多い脱毛症です。
これまで様々な治療法が試され、それぞれの治療法の効果やリスクなどのデータが蓄積されています。
社団法人日本皮膚科学会は「円形脱毛症診療ガイドライン」を策定しています。
これは円形脱毛症治療の専門家が、治療法の効果と安全性を考慮して、それぞれの治療法を格付けしたものです。
円形脱毛症の推奨される治療法は、「ステロイド局注」と「局所免疫療法」です。
2017年11月現在では、この2つの治療法が最も実績があります。
ステロイド局注とは、炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを、脱毛部分に注射などで注入する治療法です。
ステロイド局注は、成人で、脱毛部分が髪の毛の25%以下の患者にしか適用されない治療法です。
治療は月に1回くらいのペースでおこない、期間は半年くらいです。
円形脱毛症の主な発症原因は「自己免疫疾患」と言われています。
自己免疫疾患とは、本来、異物を認識し排除するための役割を持つ免疫システムが、異常によりが自分自身の体を攻撃してしまう病気です。
ステロイドには免疫システムの働きを抑制する作用があります。
脱毛部分にステロイドを注入することにより、円形脱毛症の発症原因を抑制します。
局所免疫療法とは、脱毛部分に、かぶれを発生させる物質をぬる治療法です。
通称、「かぶれ治療」と言いいます。
局所免疫法は、子供でも、脱毛部分が多くても可能な治療法です。
治療は月に2回くらいのペースでおこない、期間は短くて半年、長いと1年以上かかります。
局所免疫法は「かぶれを発生させる物質」をぬることにより、間違って自分を攻撃していた免疫システムが自分自身を攻撃しなくなります。
攻撃目標を自分自身から「かぶれを発生させる物質」に変更します。
その結果、発毛に必要な細胞は攻撃されなくなり、正常な状態に戻り髪の毛が生えてきます。
ステロイド局注と局所免疫療法に共通している事は、自己免疫疾患が関与している円形脱毛症に効果があるという事です。
円形脱毛症でも自己免疫疾患があまり関与していない場合もあります。
だから、絶対に効果のある治療法という訳ではありません。
円形脱毛症の1番の対策は、早期発見・早期治療です。
単発型のうちなら、相当高い確率で完治します。
一方、全頭型や汎発(ばんぱつ)型まで進行してしまうと、完治するのは非常に難しくなってしまいます。
どんな病気にも言えることですが、病気の治療はできるだけ症状が軽いうちに始めるほど完治させるのは容易です。
円形脱毛症はその典型的な例と言えます。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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